作品概要
ジャンル
ホラー
スタッフ
監督、脚本 ダミアン・ルベック
キャスト
マックス / ライアン・グスマン
ドリュー / カイル・ガルナー
レーン / アリックス・アンジェリス
クリス / クリス・ルー・クムホイ
トミー / ダニエル・ホフマン・ギル
ライリー / エマ・ホルツァー
簡潔あらすじ
幼馴染みのマックスとドリューはストリーミングのライブショー「除霊時間」で実際には演技や演出でありながら、本物の除霊と偽りライブ配信を行っていた。番組内では実際には効果のない除霊グッズなども販売しており、神父役で出演するマックスはアクセス数のことばかりを気にしていた。
ある日、<憑りつかれ役>が撮影に来なかった為に急遽ドリューの恋人のレーンを代役にし、いつものようにストリーミングが開始される。するとレーンは指示通りではないことを勝手にやり始める。始めはレーンがマックスやドリューを困らせようとやってると思った一同だったが、表情も声質も別人のように変わり奇怪な現象が起き始める。
本物の悪魔がレーンに憑りついたと悟ったスタッフ一同は配信を中止し逃げようと画策するもレーンを殺すと脅され、悪魔の言われるがままに配信を続行することになる。
感想や考察(注:ネタバレに関連する内容含む)
ほとんど知られていない作品だし、観る前はさほど期待していなかったが思った以上に良質なホラー映画だった。これが80年代の作品だったらカルト的に名を残したかも知れない。
この作品の印象的な場面、それはレーン役のアリックス・アンジェリスの演技に尽きる。どこか80年代チックな懐かしさも覚えた今作は、そう、私の敬愛して止まない「死霊のはらわた」のフレイバーも少なからず感じられた。サム・ライミが監督するその作品ではエレン・サンドワイズ演じるシェリルが悪霊に憑りつかれ、仲間たちによって地下室に閉じ込められるのだが、このエレンの演技がまさに憑りつかれたかのように迫真の演技だった。同作品を象徴するようなキャラクターを作り出し「死霊のはらわた」のイメージを強烈に印象付けたわけだが、今作「バトル・インフェルノ」における悪魔に憑依された女性レーンもそれを彷彿とさせた。
基本的には撮影スタジオ内で起こるシチュエーションホラー作品となっているが、観ていて飽きさせることは無い。内容そのものは目新しさがあるかと言えばそこまではないが、十分に最後まで興味を持続して鑑賞できる作品に仕上がっている。
ここからはネタバレが含まれる。悪魔は配信を続行させてマックスに告白をさせる。自分は本物の神父ではないこと。販売しているグッズには何ら力がないことなどを生配信中に告白することになる。それによってマックスが望んだ通りグングンとアクセス数は伸びていくがこれこそが悪魔の狙いだった。リアルタイムで観ていた者が憑りつかれ他者を襲う事件が勃発する。
マックスらに嘘を白状させるのが悪魔の真の目的ではなく、視聴者数を増加させてから配信を利用して観ている者に憑りつくという「リング」の貞子的戦術が悪魔の最大の目的だったというオチだ。
80年代ならカルト映画になったかも、と冒頭で書いたが、内容的にはライブストリーミング中の出来事を描いているのでネットさえ普及していなかった当時には無理な設定ではある。ただこの作品の醸す空気感はまさに80年代のB級ホラーに通ずるものがあった。見終えた印象は全体的にそんなB級ホラー感が満載だったわけだが、監督の実際の意図はどうだったのか気になる。案外まともなホラー路線を目指していたのかも知れない。
繰り返しになるがレーン役のアリックス・アンジェリスは観て価値のある存在であった。彼女の詳しい情報はわからないが、少なくとも「憑りつかれた役」に関しては抜群に魅力的で素晴らしかった。彼女は他に「Imaginary」「Do Not Watch」などの作品に出ている模様。その作品では果たしてどのような役どころと演技なのか気になるところ。
日本市場で考えると「バトル・インフェルノ」というタイトルは弱い気がする。というかホラー映画なのかもよくわからない。そのまんま映画内の配信番組名「除霊時間」のほうがキャッチーだったかなと。予告を観るにマジホラーの作りだったので、もっとB級ホラー感を出した予告にしたほうが良かったんじゃないかなと感じた。これも監督や配給会社の意図やホラーのコンセプトにもよるので、そこをどう考えていたのかはわからないが、どう見てもB級ホラーなのでそれ押しのほうが良かったんじゃないかな、という印象を持った。
総じて全体的に満足のいく内容でオススメ出来るホラー映画のクオリティはあったと感じる。