ホラー映画

死霊のはらわた【THE EVIL DEAD】1981年

超絶オススメホラー!

ジャンル

ホラー【エキサイティング・エンターテインメント・ホラー】

スタッフ

監督、脚本:サム・ライミ 製作総指揮:サム・ライミ、ブルース・キャンベル、ロバート・タパート

キャスト

アッシュ:ブルース・キャンベル  シェリル(アッシュの姉):エレン・サンドワイズ  リンダ(アッシュの恋人):ベッツィ・ベイカー  スコット(アッシュらの友達):ハル・デルリッチ  シェリー(スコットの恋人):サラ・ヨーク  

監督のこの作品の前後作

前作 アマチュア(インディーズ)としての制作はあるが実質この映画がデビュー作

後作 XYZマーダーズ(1985)

1981年の主なホラー映画

殺人魚フライングキラー、13日の金曜日PART2、食人族、スキャナーズ、ゾンゲリア、デビルスピーク、ハウリング、ファンハウス/惨劇の館)、ハロウィンⅡ、ヘルナイト

【マイ・コレクションより】死霊のはらわた Blu-rayパッケージ

超簡潔あらすじ (ネタバレなし)

5人組の若者が人里離れた山奥に佇む山小屋にバカンスで訪れると、その山小屋には地下室があり、そこで主人公のアッシュと友人のスコットは「死者の書」とオープンリールデッキを見つける。「死者の書」は以前の山小屋の所有者がカンダール遺跡から見つけた物で、テープにはその男性の声が記録されており、「死者の書」を手に入れた経緯などを話し終えると呪文を唱え出す。そしてその呪文に反応するように森深くから悪霊たちが呼び寄せられ若者たちに憑依していく。なぜかひとりだけ憑依を免れたアッシュは、憑依され恐ろしい形相で襲い掛かって来る友人たちと凄惨な戦いを強いられることになる。

感想や考察など (部分的なネタバレあるかも)

すでに鑑賞した方がお読みになるか、未鑑賞の方はこれを読んで興味を持って観るきっかけになると嬉しいですが、完全に情報を入れたくない方は(そもそもこのサイトに来てないでしょうが)ご注意ください。当ブログはストーリーを全て説明することは避けているので、未鑑賞の方が感想や考察を読んでも全てのストーリーやネタが理解されるほどではないとは思います。

迷うことなきホラーブログのレビュー1発目の映画

このサイトでの記念すべきホラー映画一発目のブログになります!それはやはりこの映画しかないと思いました。マイ・ホラー映画ランキングでずっと一位に君臨し続けているのがこの「死霊のはらわた」だからです!ホラー好きになったのもこの映画があってこそと言っても過言ではありません!

前回の自己紹介記事でも触れましたが(記事はこちら)、小学生の頃に誘われて友達の家に大勢集まって観たのがこの映画でした。とにかく衝撃だった!

当時はテレビでもホラー映画は普通にゴールデンタイムで放送してました。しかも結構、頻繁に。映画そのものがとても好きだったのでよく観てました。当時はネットなど無いのでテレビかレンタルか映画館か、といった感じです。そしてこの映画を観てズドーンとやられ、ここら辺から一気にホラーへ開花したと認識してます。

それから云十年になりますが、マイベスト・ホラー映画1位はずっと変わっておりません。これを観てなかったらこのサイトもやってない可能性が高かったでしょう。

1番の魅力はスタッフの愛情と熱意

まず、バシバシ感じるのがこの映画へのスタッフやキャストの「愛」と「熱量」です。皆の思い入れが尋常じゃないのが観ていて感じ取れます。何よりすごく楽しそう。実際、その後Bru-rayを購入しコメンタリーや特典映像などを拝見しましたが、「やはり」な感じで皆が熱心に、貪欲に取り組んでいたことがわかります。

この映画はもはやホラー映画のキングでありバイブルと言っても過言ではないでしょう。低予算で少ないスタッフとキャストで制作されたもののアイデアが満載で、展開が飽きさせない。

恐るべきカメラワーク

この映画は1981年なので実に今(2023年)から42年も前の映画です。まず映画を鑑賞するに当たっては時代性、時代背景などをある程度は意識して観るのがマナーだし、そのほうがより楽しめると思ってます。今の感覚で昔の映画を観て批評するのは公平とは言えません。その映画が出来るバックボーンを知ると興味や親近感も湧いてきます。

「これに似てる映画なくね?」っていうのはその映画がこの「死霊のはらわた」を真似してる可能性が高いです。真似というかその後の多くの監督やクリエイターたちに多大な影響を与えたことは間違いありません。当時、多くの人たちが私のような衝撃を受けたはずです。

その中でもカメラワークは当時、斬新だったのではないでしょうか。

森から何者かがうねりながら若者たちのいる山小屋に向かって来る。この映像だけでただ事ではない不安感とこれから起こるであろう恐怖感を与えてくれる。悪霊の視点とは別に、途中アッシュがゾーンに入ったような視点になるのもまた秀逸だ。序盤はちょっと頼りない感じの兄ちゃんだったアッシュだが地下室にショットガンの弾を取り行った辺りからカメラワークが少しトリッキーというか斜めになったり回転したり激しくなる。アッシュの表情や性格も序盤と変わるのだが、これらは後の2作目でガツンと開花するものでその前触れを感じることが出来る。

お気に入りのシーン

ほぼ全て、と言いたいがあえて挙げると。

・トランプのカード当てをするリンダとシェリー。そこに窓の外を眺めているシェリルが顔を外に向けながらバシバシとカードを当て出す。ふたりがビックリしてシェリルに目をやると、彼女はおぞましい形相で振り返り、宙に浮いて別人のような恐ろしい声と口調で喋り出すシーン。

→シェリル(アッシュの姉)は真っ先に悪霊に狙われた人物。小屋にあった時計の絵を描いてると手が勝手に動き出して何かの絵を描き出した。それは後に見つけることになる「死者の書」の絵だった。そしてテープの呪文を再生し悪霊が復活した後もシェリルが一番に狙われる。何者かの声で森へといざなわれるとこの映画の有名かつ問題のシーンでもある森(枝やツタ)にレイプされることになる。ボロボロになって何とか小屋まで逃げ戻ったすぐ後のシーンがこれだ。

・序盤にアッシュが恋人リンダにプレゼントを渡すシーンとアッシュが憑依されたリンダを墓穴に埋めようとするシーン。

アッシュはソファでプレゼントのケースを手に持ったまま眠ったフリをする。リンダはそのケースに気付いてアッシュが寝てるうちに中身を確認したくてケースを気付かれないように取ろうとする。アッシュは薄目を開けてリンダの動向を見るが、リンダが自分に振り向くとすぐに目をつむって寝てるフリ。またリンダはケースに手を伸ばしアッシュは薄目を開けるがすぐに振り向いたリンダに起きてることを気付かれる。やたら入念な謎のシーンなので、思わず「なんちゅうシーンやねん!」ってツッコみたくなるが、そのラブラブなシーンとは対照的にその後アッシュは悪霊に憑依されたリンダと対決し、最終的に墓穴に埋めようとするシーンがあるのだが、今度は逆にリンダが眠った(死んだ?)フリをしてアッシュは穴を掘りながらリンダが起きて来ないか確認するシーンがある。数時間前までラブリーだったのに、まさか墓穴に埋めようとは、というこの対比の為の前フリだったのかなぁ、なんて思いました。

・地下室に閉じ込められた憑依シェリルこそ「死霊のはらわた」の代名詞

確かに「死霊のはらわた」と言えばアッシュことブルース・キャンベルだと思います。彼の個性なくして完成形とは言えなかったでしょう。しかし、アッシュの姉シェリル役で出演したエレンの突き抜けた演技とあの特殊メイクによる憑依型シェリルが無ければアッシュ同様に「死霊のはらわた」がここまでレンジェンド化することはなかったんじゃないかと思います。それほどエレンの演技には凄みがあったし、シェリルのメイクもひとりだけぶち抜けて気合いが入ってました。昔のVHSのジャケは憑依型シェリルが地下室から顔を出してる写真でした。これもこの映画のひとつのアイコンと言っていいでしょう。インパクト凄過ぎな写真で、ジャケをレンタル屋で見る度に当時小学生だった私のまぶたに嫌と言うほど焼き付きました。この後で「小ネタ&トリビア」でも紹介しますが、この映画の撮影は誰しもが過酷だったらしいですが、中でもエレンはかなり大変だったようです。

小ネタ&トリビア

1. 地下室に映画「サランドラ」のポスター

アッシュとスコットは降りた地下室の奥で「死者の書」とオープンリールデッキを見つけるがその背後の壁にホラー映画「サランドラ」のポスターが貼ってある。

サランドラとは?

原題は「The Hills Have Eyes」1977年のホラー映画です。監督はウェス・クレイヴン(2015年に76歳で死去)。後に「エルム街の悪夢(1984年)」の監督もします。「The Hills Have Eyes」は2006年にフランス人監督のアレクサンドル・アジャによってリメイクされてます。

2. ゾンビ化した目はガラスのようなコンタクトレンズ?

悪霊に憑依されいわゆる「ゾンビ化」すると目も変わりますが、あれはガラスのように硬いハードコンタクトレンズを入れていたようです。目に悪いので使用制限があり、【1日5回、1回15分まで】と決められていたとのこと。しかしシェリル役のエレンは「さっさと撮ってしまいましょ!」と15分を越えても撮影の継続を訴えたそうです。なぜならそれ以上に寒さや特殊メイクのほうがしんどかったようです。エレンは一番最初に憑依されてから最後までずっとゾンビメイクのまま残っていたので、当然コンタクトレンズの着用時間も最も長く、負担は一番すごかったのだと思われます。

ちなみにコンタクトレンズをしてる間は全く見えないらしく、あらかじめ動きを確認していたようです。今は進化してソフトコンタクトで黒目だけに被せて自然に動くようで負担はないみたいですね。

3. エレンの大変さはまだまだある

上記したコンタクトレンズもそうですが、映画序盤の前代未聞の「森レイプ」シーンも過酷だったそうです。事前に聞いてないこと(ツタに足を広げられて枝を突っ込まれるシーン)も撮影することになったり、小屋まで走って逃げるシーンも実際に映画を観てもわかりますが、切り傷もかなり負ったようです。

それ以外にも開いた地下室の扉に頭をぶつけたり、特殊メイクでラテックスをずっと貼り付けているからその痛さや不快感でイライラして感情的にもなったそう。現場は実際に何もなく、トイレも無し(屋外で用足し)、水も出ない(コーヒー用のお湯で手を洗ってブルース・キャンベルがコンタクトレンズを演者に入れていたとか)、控室や休憩室なども無い為、出番の無いキャストは何もすることなく、ひたすら寒い中で待つしかなく(ネット(スマホ)なんか当然ない時代ですし)エレンはそれが最も辛かったと語ってます。

前述した通り、特にシェリル(エレン)はゾンビ化してからもかなり長く生き残るので特殊メイクで待機するのは相当しんどかったと想像できます。そういう舞台裏を知ってから観るとまた違った視点で興味深く観れますね。

4. ロケ地はテネシー州 (Somewhere in tennessee)

Blu-rayのコメンタリーによるとロケ地はテネシー州らしいです。私は映画大好きなのでロケ地にも非常に関心があり、観る映画の大半はどこでロケしてるのか探します(Googleのストリートビューなどで)。さすがにこの映画の具体的なロケ地まではわかりませんでした。しかも40年以上前の映画なので山小屋はもちろん、周囲も変わってしまってると思います。

山小屋は借りていたらしく、撮影開始当初は床が動物の糞で凄かったらしいです。撮影中に造作したり変えてしまった箇所は終わったら元に戻さないといけなかったようで、シェリル(エレン)を吊るすときに剥がした天井を元に戻す為にサム・ライミ本人が疲労と睡眠不足でボロボロな中、板を買いに現場と店舗を車で往復したそう。その取り付け方を知ってるスタッフも眠りこけて全く起きなかったとか。

5. 「エルム街の悪夢」の中で「死霊のはらわた」が流れる

「死霊のはらわた」の中で「サランドラ」のポスターが出て来ると言いましたが、「死霊のはらわた」から3年後に公開される「エルム街の悪夢」の中で今作の映像が流れます。場面は主人公のナンシーが「眠るとフレディが出て来るから寝ないようにしないといけない」とテレビをつけているのですが、そこで流れてるのが「死霊のはらわた」です。

前述しましたが、「エルム街の悪夢」と「サランドラ」は同じ監督さんです。ついでに「死霊のはらわた」の配給は「ニューラインシネマ」なのですが、「エルム街の悪夢」では配給だけではなく、制作会社としてもこの映画に参画して大ヒットを飛ばしました。

フレディとアッシュを共演させる話もあったらしいですが、それをすると「死霊のはらわた」の全てを否定することになってしまう、とかで断ったそうです。

ちなみに「エルム街の悪夢」の中では、ナンシーは結局「死霊のはらわた」を観ても眠気は取れずテレビ画面を消してしまいました…。

「死霊のはらわた」は「エクソシスト」の影響も多分に受けてると思いますが、「エクソシスト」はコメディ要素皆無の正統派ホラーだとすると「死霊のはらわた」は実にB級度が高い、面白要素満載のエンタメホラーです。「エルム街の悪夢」のウェス・クレイヴン監督は「この映画(エルム街の悪夢)はエクソシストなどと同様の正統派ホラーだ」とインタビューで語ってます。つまりそうではない「死霊のはらわた」は眠っちゃうぐらいの映画だと言いたかったのでしょうか?

あとがき

「死霊のはらわた」も「エルム街の悪夢」も当時は公開まで山あり谷ありで大変だったようです。今はもっと規制など厳しいかも知れませんが、当時は当時なりに内容や描写などから相当な反発があったようです(それはいつの時代にもあるとは思いますが)。

気付かなかったですが、記事を書き始めたのが10/13の金曜日だったので、その日にアップ出来てたら「13日の金曜日」をネタとしてチョイスするのがホラー映画への礼儀や流儀としては良かったのかも知れない。映画を観返したり調べ直したりもして結果的に過ぎてしまったのもありますが、やはり私の中での1位は「死霊のはらわた」なのでこれを始まりにしたのは間違いないかなと思います。

ちなみにスタッフやキャストなどの正確な情報以外は、映画本編、コメンタリーや過去のインタビューなどを聴いての情報ですので正確性は定かではありません(語ってる本人も間違ってることはよくあるし)。その他の感想や考察などはまさにあくまでも私の主観での見解ですのでご留意ください。

1発目だし大好きな映画だっただけにかなりのボリュームになってしまいました。最後までフルにお読み頂いた方がいらっしゃるかはわかりませんが、もし読んで頂けたのなら嬉しいです。次からはボリューム減るかも(汗)ですが、よかったらまたご訪問下さい!

では、T-Spicyでした!

ありがとうございましたー!

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