ホラー映画 映画(全ジャンル) 監督

【ホラー監督列伝 Vol.1 】 サム・ライミ

今まで作品や年代を取り上げてきましたが、今回は趣向を変えて監督にスポットを当てたいと思います。第一回目はわたしの最も愛するホラー映画「死霊のはらわた」の監督でもあるサム・ライミです。

プロフィール

誕生日

1959年10月23日

出身地

アメリカ合衆国ミシガン州ロイヤルオーク

生い立ち

サンダー(兄)、イヴァン(兄)、アンドレア(姉)、サム・ライミ、テッド(弟)の5人兄弟。サンダーは15歳のときにイスラエルで事故により亡くなっている。

テッドは俳優でサム・ライミの作品にも数多く出演している。死霊のはらわたシリーズ、XYZマーダーズ、ダークマン、スパイダーマンシリーズなど。

ライミはグローブス高校を卒業し、ミシガン州立大学とボッコーニ大学に通うが「死霊のはらわた」の撮影の為、中退する。

豆知識

ライミの出身地、ミシガン州ロイヤルオークはデトロイトのダウンタウンから北におよそ22.5kmのところにあります。都市の人口は約58,000人で1819年にロイヤルオークと名付けられました。

ライミが生まれた1959年にあった出来事としては、「キューバ革命」「アラスカ州誕生」「シャルル・ド・ゴールがフランス初代大統領になる」「バービー人形が発売される」「ハワイ州誕生」など。

日本国内の出来事では、「メートル法が完全実施」「昭和基地に置き去りだったタロとジロの生存を確認」「フジテレビ本放送開始」「週刊文春創刊」など

キャリア

父親がムービーカメラを家に持って来たことがきっかけで映画製作にのめり込む。1975年に友人のブルース・キャンベルとコダックの「スーパー8」を使った8mmフィルムの映画作りを始める。

大学時代には、兄のルームメイトであったロバート・タパートも加わり1978年に32分のホラー映画「Within the woods」を撮影。長編映画「It's Murder! 」と7分間の短編映画「Clockwork」も撮影。

カルト的人気を得る「死霊のはらわた」シリーズ

そして1981年に「死霊のはらわた(The Evil Dead)」で本格的にデビュー。公開されるや製作費のおよそ7倍となる興行収入を叩き出してカルト的なヒットとなる。※本ブログ「死霊のはらわた」のレビューをご参照ください。

続く「XYZマーダーズ(Crimewave)」('85)は脚本にコーエン兄弟が起用されたが映画自体は大コケする。

1987年公開の「死霊のはらわたⅡ(Evil Dead Ⅱ)」は1作目の実に10倍の制作費を掛けて制作され、興行収入は前作の2倍以上を記録。シリーズの人気の高さを証明する。

1990年の「ダークマン」は初のメジャースタジオ作品(ユニバーサル・ピクチャーズ)で主演は名優リーアム・ニーソン。弟のテッドとブルース・キャンベルもしっかり出演している。興行収入は「死霊のはらわたⅡ」より一桁多いほどの成功を納め、後に制作するまさに桁違いの特大ヒットとなった「スパイダーマン」シリーズを除けば、現在('23/11)までのライミ作品で一番の興行収入となっている。

続く「死霊のはらわたⅢ / キャプテン・スーパーマーケット(Evil Dead Ⅲ)」('93)もユニバーサル作品で、後に原題は「Army of Darkness」と改名され、日本版も「キャプテン・スーパーマーケット」のみで「死霊のはらわたⅢ」は削除された。興行収入では「ダークマン」の半分以下に終わったが、制作費のおよそ2倍の売上は記録しており、「死霊のはらわたⅡ」に比べるとその3倍以上の興行収入は得ているので決して悪い数字ではない。そして今作はビデオリリースによってさらにカルト的な人気を博している。

ホラー以外は不発!?

1995年はジャンルを西部劇に移した「クイック&デッド」を公開するも興行的には不発。出演は「氷の微笑」('92)で人気女優となったシャロン・ストーンを始め、ジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・ディカプリオなどスターがズラリ。クロウはこれがハリウッドデビュー作。ディカプリオは有望な若手俳優として名を挙げてきた頃で、この2年後に公開される「タイタニック」にジャック役で出演し世界的な大人気俳優となる。

1998年の「シンプル・プラン」は犯罪スリラー映画。ビル・パクストン、ブリジット・フォンダ、ビリー・ボブ・ソーントンらが出演。初のパラマウント映画による作品だったがこれも振るわずに終わる。

ちなみにこの頃、ソーントンは「ジュラシック・パーク」でお馴染みのローラ・ダーンと婚約するも、翌年「狂っちゃいないぜ」で共演したアンジェリーナ・ジョリーに鞍替えし2000年に結婚している。

女優のブリジット・フォンダは「キャプテン・スーパーマーケット」にも出演している。音楽を担当しているダニー・エルフマンは「ミッドナイト・ラン」「ビートルジュース」「3人のゴースト」「バットマン」「シザーハンズ」「メンインブラック」シリーズ、「スパイダーマン」シリーズなど超ヒット作の音楽を手掛ける人気の映画音楽家で、ライミやティム・バートン作品に数多く参加。今作から5年後の2003年にフォンダとエルフマンは結婚している。

1999年の「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」はケビン・コスナー主演のスポーツ物のドラマ映画だが、興行収入こそ悪いものではなかったものの莫大な製作費が掛かっていたこともあり、製作費を大きく下回る結果に終わる。コスナーはラジー賞の最低主演男優賞にノミネートされている。

2000年は、ケイト・ブランシェット、キアヌ・リーヴスらが出演するホラー・スリラー映画「ギフト」が公開。キアヌは前年に世界的な大ヒット作「マトリックス」に出演したばかり。今作は製作費に対して興行収入は4倍以上を記録している。

メガヒット「スパイダーマン」とそれ以降

そして2002年に「スパイダーマン」、2004年「スパイダーマン2」、2007年「スパイダーマン3」という超特大ヒット3部作を監督する。しかし3作目に納得がいかなかったライミは2本の続編を計画したものの脚本に満足が行かず頓挫することとなる。

2009年の「スペル(Drag Me to Hell)」はプロデューサーなどではなく、監督として携わるという点では「死霊のはらわたⅡ」以来、実に22年振りにホラー映画へカムバックして来たと言っていいだろう。そしてこのB級感溢れる作風は「死霊のはらわた」の流れを汲んでおり、コメディ要素も多分に含まれている。「キャプテン・スーパーマーケット」が「死霊のはらわた」の冠を外したならば今作が実質「死霊のはらわたⅢ」と言ってもおかしくはないほどのライミ節が効いたホラー映画に仕上がっている(ただしブルース・キャンベルは出演していないが)。

日本においては(世界的にもだろうか?)ライミはもはや「スパイダーマンの監督」のイメージが強かったせいか今作を観た観客からはその内容が「意外」という声もあったが、デビュー作から知るカルトファンにすれば「お帰りなさい!」と言いたくなるほどしっくりくる作品なのかも知れない。制作費に対して3倍以上の興行収入を得ている。

2013年公開の「オズ はじまりの戦い(Oz: The Great and Powerful)」は、「スパイダーマン」でも組んだジェームズ・フランコが主演のファンタジー・アドベンチャー映画。興行収入は全世界で5億ドル弱という大ヒットとなる。しかし、比較されがちな2010年公開の「アリス・イン・ワンダーランド」(興行収入10億ドル以上)の半分にも満たなかった。公開前はこれを抜くと批評家からは目されていた。ちなみにどちらも音楽はダニー・エルフマンである。前述した通り、ライミもバートンもエルフマンを好んで起用している。

その後はテレビドラマやプロデューサー業に回って、映画監督として復帰するのは2022年「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」になる。本作は2016年公開の「ドクター・ストレンジ」の続編。

プロデューサーとしては、「THE JUON/呪怨(The Grudge)」シリーズ、「ブギーマン」、「死霊のはらわた」リメイク版、「ドント・ブリーズ」シリーズなどに関わる。新しいところでは製作総指揮として「死霊のはらわた ライジング」('23)に携わる。

ドラマでは「死霊のはらわた リターンズ(Ash vs Evil Dead)」が2015~2018年に放送された。製作総指揮として旧知の仲で知られるブルース・キャンベル、ロバート・タパートらと名を連ねたが、監督として手掛けたのはシーズン1の第一話のみとなっている。主演は鉄板のブルース・キャンベル。

まだまだ「死霊のはらわた」シリーズは発展しそうである。

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